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ネットワークエンジニアリングはアジャイルじゃない

networking

リーン・スタートアップと言ってもいい.Web 界隈ではあたりまえの開発手法を ネットワークの開発に使うのはむずかしい.

自分はインターネットが得意で (ネットワークとしてのインターネットね!) たかだかIP と上下レイヤーくらいしか分からないんだけど,なにか新機能を作るときの事情はだいたい共通していると思うし,幅広く「ネットワーク」とくくってしまう.実際は共通どころか,エンタープライズネットワークのほうが制約が多いし,IP よりPHY のほうがつらい.まだ自由度があるインターネットでさえ,Web 界隈やミドルウェア,サーバーインフラ界隈のようなスピードで動けない.

うらやましいことに,それらの開発についてはオンライン/オフラインいろんなところで議論され,本が出版され,ノウハウが溜まっていく.一方でネットワーク開発は 低いギアでアクセル踏みっぱなしのような,なんか「タスクこなしてるんだけど進んでない感じ」がする.なんですかこの違い.アプリレイヤーの仕事をしているときとは違ったストレスを感じる.

ネットワークエンジニアリングの現場

ハードウェア / ソフトウェアを使ってネットワークに新機能を足したり,地理的に / 帯域的に拡張したり,運用を変えたりする場合,

  1. どういう技術があるか調査する
  2. テスト環境で粗く試す
  3. 設計する
  4. 必要なハードウェア,ソフトウェアを調達する
  5. 検証環境でちゃんと試す
  6. 必要な回線を調達する
  7. ユーザーから借用をとる
  8. ハードウェア,ソフトウェア,回線をインストールする
  9. デプロイする

みたいなことが必要だが,あるあるネタとして

  • 調達のリードタイムが予測できない / 長い
  • やってみないと,実網にどんな影響が出るかわからない
  • 借用に要する時間が予測できない / 長い

こういう問題をよく見る.たとえばソフトウェア開発と比較すると「ソフトウェアには起こらない問題」と「起こってるんだけど頑張って回避している問題」が含まれていて,ネットワークエンジニアはソフトウェアエンジニアが頑張っているところを盗まないといけないと思う.

もちろん「コード書いて自動化しましょう」もその1つなんだけど,生産性が低い原因はたぶんそれだけではない.

生産性の低さ

自分は,デプロイまでの待ち時間が大きな原因だと思っている.調達とか 会社をまたいで調整しないといけないタスクが挟まっていたり,借用 (お客さんに「メンテしていいですか」と聞いて回る営み) のようなタスクがあるかもしれない.契約上は1ヶ月前に通知すればメンテできるが,慣例で一部法人ユーザーにお伺いを立てたりすることがある.「これ!と決めたやつをデプロイするまでに1ヶ月待たないといけない」なんて普通にある.

そのせいで 年間のデプロイ回数が限られ,フィードバックがないから試行錯誤できず,一発で大成功させようとして準備の時間が増え,待っている間にネットワークが変わって手戻りが発生する. 他者との調整が主なボトルネックだから,ミーティングが増え,資料を作りまくり,調整能力だけがグングン伸びる.

ソフトウェア開発はどうやっているか

アジャイルイテレーションを小さく回せ」リーン・スタートアップ「MVP から始めよ」両方とも,デプロイに時間をかけず フィードバックを短期間で得るための努力があってのことだと思う.大規模にやれば「マージに時間がかかる」「QA チームが求める品質にならない」いろんな問題が出るところを,「CI を回す」「毎週火曜日にリリースすることにする」「組織を変えて,QA 機能をプロジェクト内に持つ」「ベータ提供するしくみ」「一部ユーザーにのみデプロイし,小さく失敗して早く直す」など,技術で解決するのはもちろんのこと 組織 / ワークフロー / ポリシーを見直して頑張ってる.

ネットワーク開発は何ができるか

「調達のリードタイムが予測できない / 長い」というのはしょうがない.でも「在庫を持つコスト」と「持たないことによる生産性の低下」は天秤にかけられるかもしれない.

「やってみないと,実網にどんな影響が出るかわからない」とくにインターネットルーティングは生き物だからしょうがないけど「自分たちのネットワークは複雑だから,やってみないとわかりません」は避けないといけない.シンプルに保つ努力は必要だし,インターネットの端っこにテストベッドを持つ選択肢もあるし,堅く作る前のベータサービスに付き合ってくれるユーザーがいるかもしれない.

「借用に要する時間が予測できない / 長い」レイヤーが低いほど上に乗っているものが多い = 影響範囲が大きいので,メンテナンスには慎重になるべき.でもメンテナンスポリシーが曖昧だと「うーん,分からんけど安全側に倒して…」ってなるし「契約ではできることになってるけど,いままでそうしてなかったから…」みたいなのも癌だと思う.

ちなみに

いま,週のうち数日はフリーのネットワークエンジニアとして働いており,タスクをガッとこなす日と何もしない日が極端に分かれている.それでも自分がボトルネックになるケースは少ない (はず!) ので,待ちが多いと時間を区切って生産性を上げるという手が効く.そういう意味では,トヨタのリーン生産方式の方は勉強しないとなあ,と思ってる.